鈴鹿セブンマウンテン・テント泊(週末縦走)

熾烈なる鈴鹿セブンマウンテン、歩き切るぞ!!!

山行情報

日時:2025/06/06 ~ 2025/06/08 天候:晴れ/曇り/曇り
ランク:C-D-14:00 参加:4名
山行担当:CL3840 SL3847
記録担当:文責:3835, 3847, 4036, 3840 写真:3835, 3847, 4036, 3840

コースタイム

1日目
西藤原駅7:14…9:44藤原岳…13:41竜ヶ岳…15:25石榑峠(泊) 歩行時間:7時間34分/休憩時間:37分/合計:8時間11分
2日目
泊地4:00…6:51釈迦ヶ岳…9:53根の平峠…12:48雨乞岳…15:44御在所岳…18:05武平峠駐車場(泊) 歩行時間:13時間20分/休憩時間:45分/合計:14時間05分
3日目
泊地4:25…5:29鎌ヶ岳…9:57入道ヶ岳…11:21椿大神社 歩行時間:6時間06分/休憩時間:50分/合計:6時間56分

コースマップ

記録日:2025/06/06~2025/06/08

山行記

はじめに

初夏、日本アルプスはまだ雪の季節だ。この時期にテントで歩ける所を探していたところ、鈴鹿セブンマウンテンがヒットした。調べてみたら、鈴鹿山脈を北から南に向けて縦走するルートで、獲得標高5,000m、距離45㎞に及ぶ。しかも、小屋はおろか、テント場も整備されたものがあるわけではない。いわゆる幕営だ。加えて、水の調達やトイレもどうするか問題だった。下山後の最終バス時間も気になる。ネットで情報収集を図るが、なかなかこれというものがヒットしない。季節的にも、梅雨のはしりの時期。天候判断も難しい。

でも、鈴鹿セブンマウンテンという名前に惹かれた。しかも、テントでしか歩けないタフなコース、挑んでこいと言わんばかりだ。で、やってみようと。SLと申し込みのあった仲間2名と事前作戦会議も開き、実施に漕ぎつけた。だが…。(文責:3840)



1日目~期待膨らむ歩きの開始、ところが!

朝、4時に目を覚ます。これから始まる山行への期待と不安が入り混じった感情。この山行への参加は去年、CLから提案された企画に賛同したのがきっかけだった。鈴鹿セブンマウンテン、なんと響きのいい言葉だろう。前日には、名古屋のホテルで参加メンバーと前夜祭で大盛り上がり。なんだか下山後の反省会のノリだった。そう、この時はまだ誰も、この先の山行で起こるさまざまなトラブルを知る由もなかった。しかし、この響きのいい言葉に騙されていた…。

身支度を整え、ロビーで待ち合わせ、近くのファストフード店で牛丼をいただき、お腹を満たしたところで駅へと向かう。ここで、人生初の近鉄電車に乗り込む。関東ではあまり見かけないレトロな車内に、新鮮さを感じる。途中、富田駅で三岐線に乗り換える。このあたりから周りの雰囲気が変わり始め、車窓から見える山々に、「これが○○岳じゃない?」とか言いながら進み、ようやく最寄りの西藤原駅に到着。

いよいよ登山開始。天気は、若干曇りながらも時折日が差し、暑くなりそうな予感に警戒感が強まる。歩き始めは、緩やかな登山道が続く。しばらく歩くと林道を抜け、視界が広がり、新緑の青葉に目を奪われる。下界の景色は、ガスがかかってあまりよく見えないのが残念。2時間半ほど歩いたところで藤原山荘が見えてきた。少し休憩できるかなと思ったが、どうやら避難小屋ということで営業しておらず。そのまま1座目の藤原岳登頂、記念写真の撮影。このころはまだ皆元気一杯で、コースタイムを上回るペースで歩けていたため、これは楽勝だなと思っていた。

だが、それも束の間、藤原岳からの下りはさながらバリルートのよう。道がいきなりわからない。慎重に進み、今まで稼いだ標高を一気に下る。下った後は、急登が待ち構える二段構え。これに体力を削られる。最初は低山だから大したことはないと見くびっていたが、とんでもなかった。登山開始から6時間後に、2座目の竜ヶ岳に到着。記念撮影を済ませ、今夜の宿泊地である石榑峠に向かう。しかし、ここでも激下り。このあたりから地質が変化し、花崗岩が混じったザレ場が出現し、精神的にも肉体的にもしんどい時間が続いた。そして、ようやく宿泊地に到着。

まずは水を確保するため、距離にして400mほど下って登り返し。テント場に到着するも、誰もいない貸し切り。どれだけ騒いでも文句を言われないって最高。まずはビールで乾杯しテントを設営した後、宴会スタート。ひとしきり騒いだ後、20時にはそれぞれの寝床へ戻っていった。ちなみに石榑峠には、きれいなバイオトイレが設置されていて安心。2日目に続く。(文責:3835)



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2日目~熾烈極める歩きの真骨頂!

2日目は、石榑峠から武平峠まで。距離24㎞、全行程の半分を歩く計画だ。なぜ、そんな無謀な行程に?トイレがある次の幕営可能地は、武平峠のみだからだ。多少?距離があろうが、そこは譲れない。だが、鈴鹿セブンマウンテン最高峰の雨乞岳を含む10座の踏破が前提条件。特に終盤の杉峠から雨乞岳、御在所岳への登り下りが勝負どころ。

不安と緊張の面持ちで、朝を迎える。夜露に濡れたテントを撤収し、石榑峠をスタート。まずは三池岳まで、アップダウンを繰返しながら標高をあげる。ヘッデンの光が霧に反射し、幻想的な雰囲気。たびたび、真砂と呼ばれる風化した花崗岩の白い砂地が現れる。ほどなく白い砂と緑の芝、赤い鳥居が印象的な八風峠に。比較的緩やかな登りの尾根を進み、現れた急登をクリアすると、3座目の釈迦ヶ岳に到着。残念ながらガスで眺望なし。

猫岳を経由し、下り基調の尾根を進んでいくと、大きな花崗岩と猫の地上絵がある羽鳥峰峠。ここの沢で水を補給。ここから、小刻みのアップダウン地獄が続く。青空が広がり気温も上昇。時折、御在所岳が見えるも、絶望的な遠さに言葉もでない。水晶岳を巻いて150mほど標高を落とし、根の平峠に。ここは雨乞岳をスルーする御在所岳への最短ルートと、雨乞岳経由の大迂回ルートとの分岐点だ。双方のルートには天と地ほどの差がある。“どうする?”と、CLが訊ねる。皆の答えは雨乞岳経由!鈴鹿セブンマウンテン完歩への強い決意が固まった瞬間だ。だが、熾烈極める歩きがわれわれを待っていた。

根の平峠から、渡渉を繰り返しながら約2時間。湿った斜面のトラバース路はザックの重さもあり、スリッピーで気を抜けない。標高750mのコクイ谷出合を過ぎると、杉峠に向け標高を上げ始める。そんな中、御池鉱山旧跡を過ぎたあたりで、右踵にズキンと痛みがはしる!靴擦れだ。絆創膏で応急処置。出発して8時間、当初の予定野営地、杉峠に到着。雨乞岳までの標高差はわずか200m。だが、壁のような急斜面が。

しばし休憩後、意を決し取り付く。ニセピークを越え、笹薮に覆われた登山道を登りつめると4座目の雨乞岳に。山頂には、重装備のわれわれとはまったく違う大勢の登山ツアー客。前方の御在所岳との距離は少しも縮まっていない。次は、東雨乞岳からの激下り。1時間20分ほどで、御在所岳取り付きの沢谷峠に。幕営地の武平峠への分岐でもある。一瞬、御在所スルーが頭に浮かぶも、痛む足を庇いながら1時間ほど登り返し、5座目の御在所岳に到着。ここは観光地。ザックを背負ったわれわれは場違い感満載だ。

御在所岳は双耳峰。食事と水の補給のため、ロープウェイ駅のある頂へ。駅直下に直登の足跡。近道に違いないと登るも、すんでのところでなんと行き止まり!結局、迂回するという失態をおかす。レストランに着くやいなや清涼飲料水をゲット!夕食を兼ねた食事を摂り、ようやく一息いれる。

御在所岳からは、スリッピーな真砂のザレ場や急峻な岩稜帯の下りなど50分ほどの激下りが続き、幕営地の武平峠駐車場に到着。早々に駐車場の端に幕営する。駐車場には数台の車。ローリング族のような車が時折、爆音を響かせているが、今さら、気にしても仕方ない。早速、冷えたビールで乾杯!  

実に14時間近い歩行。テント泊装備で、これほどの距離を歩いたのは初。絶景を楽しむというよりピークハント!熾烈極める歩きだったが、山場を乗り越え、鈴鹿セブンマウンテン完歩をほぼ確信した最高の1日でもあった。3日目に続く。(文責:3847)



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3日目~厳しい歩きとその先に待っていたご褒美!

「今日は家に帰れる」。3時に起床した時の最初の思いだ。昨晩は、疲労のためフライシートを張らずに被せただけで寝てしまったが、カラッと乾いてくれていた。昨日までの厳しい歩きで、左足の踵には靴擦れができ、直径3㎝の水膨れを数枚の絆創膏でやさしく保護し、下山まで歩けるようにと願った。残すことあと2座、天候は予報より好転しそうな空模様の中、武平峠駐車場を出発した。

林道の登りを経て稜線へ出ると、目の前に迫力ある岩稜の鎌ヶ岳が現れた。後方には登頂した5座、どれがどれか脳みそが働かず分からないが、遥か彼方に見える。登頂後は、しばらくアップダウンの少ない尾根歩きと微風のおかげで、体力を整えることができた。稜線歩きを楽しんでいるのも束の間、次の宮越岳の登りがヤバかった!急登のうえ、岩肌に手足の置き場がなく、つるつる花崗岩の上にザラメがまんべんなく覆っている状態。私はテントザックの重さに振られて何度か滑ったが、仲間の支えで擦り傷だけでなんとか修羅場を通過できた。何人かすれ違ったが、トレランの人がいるのがほんと不思議である。

急登と急下降の繰り返しはずっとこれまでのお決まりで、身体と心が削がれる思いを最後の入道ヶ岳でも覚悟していた。ところが、入道ヶ岳山頂手前にある椿大神社奥宮を通過すると、急に公園のような景色が広がり、丘の上には黄金の鳥居が輝いているではないか!私は、靴擦れの痛みに耐えながらそのゴールテープへ到達すると、神様が温かく迎え入れてくれるような感覚と、鈴鹿セブンマウンテンを何とか登り終えた安堵感に包まれていた。

初日から常に、身体が最後まで持ちこたえてくれることを願うという、これまでとは異なるロングトレイルであった。そんな思いの中、何より仲間のサポートがありがたかった。そうでなければ絶対にこの縦走を完結できなかった。ほんと感謝の山行であった。(文責:4036)

【CL追記】 

これが、熾烈を極めたテント泊縦走「鈴鹿セブンマウンテン」の全貌だ。もう一回やるかと言われれば、現時点ではNOだ。今回はメンバーが4人と少なく、しかもよく山行を共にする気心知れた仲間ばかり。空気感は、さながら個人山行のようだった。でも、このようなきつい山行を相互に助け合いながら歩いたからこそ、より一層絆であったり、仲間としての関係が深まったように思う。そこがこの歩きの醍醐味かもしれない。皆さんもぜひ仲間と挑んで、これを味わってみませんか。今回も仲間と山に感謝だ。(文責:3840)



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