チンネ左稜線(撤退編)

撤退を決め、雪に作ったボラードで懸垂。地味に怖い

山行情報

日時:2025/07/19 ~ 2025/07/21 天候:晴れ
ランク:D-D-8:00 参加:4名
山行担当:CL3256 SL3634
記録担当:文責:3537 写真:3256, 3634, 3537, 3730

コースタイム

1日目
室堂8:15…8:50雷鳥沢キャンプ場…11:10剱御前小舎…12:05剱沢キャンプ場12:20…13:20長次郎出合…16:10熊の岩(泊)
2日目
泊地4:15…5:20長次郎谷上部5:30…6:30熊ノ岩7:10…7:40Cフェース取り付き8:15…8:40 1P終了点9:15…9:50熊の岩10:50…15:25剱沢キャンプ場15:50…18:40雷鳥沢キャンプ場(泊)
3日目
泊地7:50…9:00室堂

コースマップ

記録日:

山行記

1日目

扇沢にて、始発の電気バスに乗る。今日は源次郎尾根組も一緒のはずと思っていると、もうバス席に座っているではないか。さすが早い。バスの出発を待っていると、只者ではないと思われる人を見かける。ガタイ良く真っ黒、独特な風貌。この方とは、この後もたびたびお会いすることになる。 

室堂到着後、準備を整えて今日の目的地へと歩を進める。まだ元気だが、荷物が重い。雪山シーズンは背負っていたが、春になってからはクライミングばかりで、不安が募る。 

剱御前小舎までは、お花畑に癒されながらなんとかたどり着く。ここからは下りだ。今年は雪が多い。所々雪渓を横切り、剣沢キャンプ場へ。剣沢の冷たい水で生き返る。 

ここで最も重要なこと、それは警備隊の方からの長次郎谷の様子や雪渓の状況の情報を仕入れることだ。リーダーが話を聞くと、今日はチンネ、という声が多く聞かれたとのことだった。競争率が上がったか。 

しかし暑い。早く雪渓に乗りたい。雪渓の上を通る風は涼しく心地よい。剣沢雪渓を下り、平蔵谷、そして長次郎谷。もの凄い急登である。出合で一息入れようとしたら、扇沢で見かけた只者ではない方が休んでおられた。一見、話掛けづらそうに見えたが、案外気さくな方だった。この方とはこの後も、同じようなペースで長次郎谷を登っていく。 

リーダーの励ましもあり、やっと熊の岩が見えてきた。だが、遠い。見えているのに、なかなか着かない。 最後の急登を登りやっと辿り着いた今日のテン場、眺めは最高。八つ峰と源次郎尾根に挟まれ、まさに雪と岩の中にいる。こんな経験はなかなかできない。テントを設営し、明日に備える。



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2日目

4時15分ごろ出発。天候は落ち着いている。アイゼン、ピッケルで本日の取り付きへと向かい登っていく。かなりの急登だ。雪の状態は悪くないが、油断禁物。 

剣沢で聞いていた通り、雪は多いが、クラックが大きく入っている。垂壁の雪壁をピッケルをさし、アイゼンの前爪を蹴りこんで登ったり、岩へ移り、浮石の多いところを登ったりしながら高度を上げていくが、途中で行き詰まった。岩沿いに回り込むには雪渓との隙間が少なすぎ、身体が入らない。大きくクラックの入った壁のような雪渓をいくつも越えていかねばならない。

もう少しなのに、と思っていると、1組のガイドパーティーが安全を確保できないからと、スノーボラード(懸垂下降用アンカー)を作って下りるところであった。さあ、われわれはどうしよう…。もしこのまま登っていったとしても、帰りにここの雪渓を何回ボラードを作り、懸垂すればよいのだろうか、安全確保できるだろうか…と皆で考え、撤退を決めた。

ガイドが作ったスノーボラードを借りて懸垂下降、岩をクライムダウン、登ってきた道を下り、テン場へ戻る。お茶を飲んでいったん落ち着き、これからの予定を練り直す。目の前には八つ峰A、Cフェース。ならばCフェースへ行こう、と決まり向かう。取り付きには数パーティーが待機中。私たち同様、チンネからの転進組も多かった。 

前のパーティーがなかなか進まず、1ピッチ目を登っても停滞が続く。上に抜けるには時間がかかると判断し、捨て縄をかけ、そこから懸垂で基部へ戻る。後続のパーティーも下りるようだ。 

再度、どうしたものかと話し合いの結果、今日は雷鳥沢まで下り、明日龍王岳をやろうということになった。まだ午前中なので、雷鳥沢には夕方には着くとふんで急いで撤収、長次郎谷を下る。さらに剣沢雪渓を登る。朝から動いているせいもあるが、ザックがずっしりと重い。 

剣沢で源次郎尾根組に別れを告げ、剱御前小舎まで登る。剣沢でまた、只者ではない方にお会いする。この方も三の窓までは行けなかったようだ。 

雷鳥沢まで急で長ーい下り、無事にキャンプ場に到着。とてもにぎわっていたが、何とか平らな場所を見つけテントを張る。夜、私の体調に異変が。食事がまったく喉を通らない。長い行動時間と重さで内臓が疲れてしまったようだ。水分をしっかり取り、早めに就寝する。



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3日目

朝起きると、体調は戻って食事もとれた。しかしこの荷物を一の越まで担ぎ上げ、クライミングができる自信がないと告げると、リーダーは皆でゆっくり帰ろうと言ってくれた。室堂で皆の帰りを待つつもりでいたので、申し訳ない気持ちと感謝でいっぱいだった。 

体力的にも今回が最後かなと思って臨んだので、リベンジと言われてもすぐには決心がつかないなー。次があるとしたら、最大級の準備をしなくてはいけないと心に誓う。

今回のターゲットは、物理的に遠い遠いチンネ、だった。さらに二日目のアタックで、別の意味で本当に遠いチンネを味わわされた山行だった。



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