唐松岳~白馬岳~朝日岳~栂海新道(ロングトレイル)
山行情報
日時:2025/06/26 ~ 2025/06/30 天候:晴れ/曇りのち小雨/晴れ/晴れ/晴れランク:C-D-11:00 参加:6名
山行担当:CL3950 SL3060, 3198
記録担当:文責:3950, 3060, 3198, 3740, 3762, 4064 写真:3950, 3060, 3198, 3740, 3762
コースタイム
1日目
白馬BS9:30-12:00白馬 Mammoth House(泊)
2日目
泊地4:15=4:35猿倉手前ゲート4:45…5:00猿倉荘5:12…6:12白馬尻6:17…9:24岩室跡9:46…11:56白馬山荘(泊) 歩行時間:6時間52分/休憩時間:49分/合計:7時間41分
3日目
泊地5:45…6:07白馬岳6:09…8:56雪倉避難小屋9:02…9:53雪倉岳9:57…13:13水平道分岐13:16…15:01朝日岳15:07…16:16朝日小屋(泊) 歩行時間:10時間10分/休憩時間:21分/合計:10時間31分
4日目
泊地4:25…5:47朝日岳5:55…8:13アヤメ平…9:36黒岩平9:37…10:10黒岩山10:28…11:53サワガニ山…13:15北又の水場13:42…15:10犬ヶ岳15:21…15:30栂海山荘(泊) 歩行時間:10時間08分/休憩時間:57分/合計:11時間05分
5日目
泊地4:42…6:26菊石山…8:38白鳥山8:48…10:02シキワリの水場10:03…10:50坂田峠…11:05坂田峠駐車場 歩行時間:6時間12分/休憩時間:11分/合計: 6時間23分
※-公共交通機関移動、=タクシー移動
コースマップ
記録日:2025/06/26~2025/06/30山行記
はじめに
白馬岳~朝日岳間の“花”を今一度観たい。ウルップソウの時期がいい。栂海新道に挑戦したい。不帰ノ嶮を越えたい。でも7月は立て込んでいて…。ということで、やや早いかもしれないが、朝日小屋がオープンするであろう6月末の計画に。
実施が近づくにつれ、残雪の多さが問題として浮かび上がる。参加者には10~12本爪アイゼンの携行を義務化。だが、ここ2ヶ月近く白馬岳~朝日岳~栂海新道間は誰にも歩かれていないため、コースの状況が分からない。
6月13日からヘリを利用して小屋開け準備をしてきた朝日小屋の清水さんからは、“みろくが今シーズン最初のお客さま。今年は雪が多く、富山県警山岳警備隊もまだ入れていない。無理をせず、くれぐれも慎重に!” と念を押される。
26日、八方尾根経由で唐松岳頂上小屋宿泊、27日、不帰ノ嶮経由白馬山荘、そしてさらに北に進む、を基本の計画としていたが、出発当初の天候は不順。確信をもてないまま出かけることになった。 (文責:3950)
1日目
台風2号接近の情報に、初日は白馬村で前泊し、翌日、八方尾根から唐松岳への登りと高を括っていたが、前日、CLより予定通り実施の連絡。慌てて翌日、登頂モードに切り替えた。
長野駅から、アルピコ交通を乗り継いで白馬バスターミナルに到着。CLからミーティングで、午後は風雨が強まるようなので、
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- 白馬村の3LDKのおしゃれなログハウスに前泊
- 中も広くて設備もいい
2日目
3時起床。今日登るのは白馬大雪渓。たっぷり雪を残しているだろう大雪渓に向けて気合を入れる。すぐにアイゼンを出せるようパッキングしてジャンボタクシーに乗り込む。
曇り空の下、前夜の雨で濡れる登山道を白馬尻に向けて標高を上げて行くと、さっそく可愛らしい花が出迎えてくれる。初めて見るスケルトンフラワー「サンカヨウ(山荷葉)」だ。
白馬尻からは、いよいよアイゼンを着けて雪渓登りだ。前も後ろも他のパーティーが誰もいない大雪渓。アイゼンを着けてしまえばさほど難しい歩きではないが、落石を気にしながらの緊張感のある歩きだ。CLのルーファイで順調に標高を上げていくが、はじめは雲間から日が差していた空が、時間が経つにつれて徐々に雲が厚く下がってきて視界をふさぐようになり、小雨も降ってきて難しい歩きになっていく。
3時間ほど経ち、岩室跡を通過し夏道に入るころには、雨と風がもう一段ひどくなり身体を冷やしていく。登り始めのウキウキ気分はすっかり消えてしまっていた。岩室跡からさらに2時間、視界がまったくない道を黙々と歩き、そろそろ山荘が見えてくるかというところで出迎えてくれた花は「ウルップソウ」。目の前がパッと明るくなったような気がした。
白馬岳山荘にチェックイン。濡れたウェアを着替え、喉を潤しお腹を満たしていると、それまでの暗い空が嘘のように明るくなり、真っ青の夏空が広がった。ちょっとほろ酔いで立った白馬岳山頂の眺めはまさに天空の楽園。まだまだこの先、どんな素晴らしい眺望を見せてくれるのだろうと、期待は大きく膨らんだ。(文責:4064)
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- 林道が補修中のため、通常の大雪渓の登山口である猿倉の手前でタクシーを降り、歩き出す
- 猿倉荘。ここで身支度を整える
- 大雪渓に向けて滑りやすい橋を渡る
- 小さい沢を横断
- 白馬尻から、これから登る大雪渓。まだまだみんな元気
- 大雪渓を登る。まだ雪上にマーキング等はない。落石は左の杓子方向からが多いので、基本、右寄りに進む
- クレパスを越える
- 一休み。雪渓の上に落石が見える
- 小雨とガスの中、雨具の上を出して登り続ける
- ようやく雪渓を離れ、夏道に乗れそう
- 天気が回復してきたので、とりあえず白馬頂上に向かう
- 白馬山頂。夏山だが、皆着こんでる
- 白馬頂上から、東面を見下ろす。白馬主稜、三合尾根、大雪渓が広がる
- 白馬山荘から白馬鑓ヶ岳と右奥に劒岳と立山を見る。奥には槍ヶ岳と穂高も
- 山荘から立山と剱岳を正面に。その手前の雲の下には黒部川が流れているはず
3日目
朝5時過ぎ、白馬山荘の朝食を済ませ、本日の目的地、朝日小屋をめざす。晴れ。ただ、風が強い。まだ雪をたっぷり被っている北アルプスの山々は美しい。360度の展望と斜面に咲き乱れる高山植物の花々に魅了されつつ、蓮華温泉への二つの分岐を過ぎた。
この後、朝日小屋まで誰にも会わない。CLの予測では夏道にはまだ残雪あり。ここからは、先の見えない山旅の始まりだ。鉢ヶ岳の巻き道で最初の雪上トラバース。斜面は真っさらで何の跡形もないし、見渡す限り雪原が広がっている。アイゼンを着け、GPSで方向を確認しながら、次の夏道への入口を探して進む。皆、緊張感いっぱい。気の抜けない雪上歩きと、一方で足元に咲く花々を楽しみながらの夏道歩きを交互に何度も繰り返す。
雪の消えた夏道の両斜面には色とりどりの花が咲き、花園という言葉がまさにピッタリ。雪倉岳山頂でも素晴らしい展望が待っていた。あー、でもまだまだ朝日小屋は遠い。雪上歩きとルーファイにも少し慣れたころ、もう少しで水平歩道分岐と安心したころ、この日最大のピンチ。雪がなければ単なる渡渉と思われるも、沢の上に厚く積もった雪の壁があり、行く手を阻む。なんてことだ…と思いきや、CLはあっさりアックスとロープで全員を無事引き上げた。
朝日岳には15時着。今日最後の下り斜面に立つと、薄もやに霞んだ小屋が見え、人が手を振っている。「気をつけてねー」。小屋番の清水さんだ。我々は今夏初めてのパーティーとのこと。夕食には赤ワインつき地元食材を使った美味しい料理をいただき、一日を終えた。(文責:3198)
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- 白馬山荘前から出発。ヤマレコはログをオンにして!
- 白馬頂上からウルップソウを越えて東方向を遠望。正面遠くの台形型の山は戸隠
- このあたりは高山植物の宝庫
- 三国境を越えて、雪倉岳、朝日岳に向けて歩を進める
- 鉱山道分岐手前から南方向。旭岳は白馬岳の“属峰”だが立派。残雪も多い
- 鉢ヶ岳は左斜面をトラバース。このあたりから雪が多くなる
- 雪から夏道に戻るが、また雪が出てくる
- 白馬岳から子蓮華方面を振り返る。前後に人はまったくいない
- 雪倉岳避難小屋前で休憩
- ライチョウ発見。今回の山行では4回見た
- 雪倉岳避難小屋あたりから鉢ヶ岳を振り返る。真ん中上は旭岳
- “歩ける!”男子とお花畑
- 雪倉岳山頂にて
- 朝日岳(正面やや左)に向けて進む
- 赤男岳水平道分岐手前で、乗り越えがたい雪渓に阻まれる。アックスがなかなかシャフト全部まで刺さらず苦慮した
- 朝日岳の登りにかかる。ここからが結構やっかいだった
- 水平道分岐手前。桃源郷のような雰囲気。白いのは水芭蕉
- 朝日岳山頂で。貸切り状態が続いている
- 朝日小屋(真ん中に小屋の屋根)に向けて下りる。少しルートミスして、出迎えてくれた小屋の主人から大声で注意を受ける
- 今シーズン最初の宿泊客だった。右奥が朝日小屋のオーナー兼女主人の清水ゆかりさん
- 小屋内の食事のイラスト。朝飯と昼食用弁当は小ぶりの寿司やご飯ものを購入。美味
4日目
今日の懸念は二つ。残雪はどの程度か。北又の水場を発見できるか。北又の水場は雪に埋もれて、今年はまだ確認されていない。朝、空が明るくなり始めた4時半に朝日小屋を出発。天気は晴れ。今日はCLの指示で先頭を務める。
朝日岳山頂への登りは、雪原と灌木帯の道が交互に現れる。足を止めて振り返れば、ピンクに色づいた空に冠雪した白馬や剱の山々が雄大な姿で聳え立つ。自然の偉大さに心を打たれる。ほどなくして山頂に着くと、皆で記念写真を撮り、下り始める。今日は身体が軽い。まずめざすは蓮華温泉への道との分岐点、吹き上げのコル。途中、何度か雪原が現れ、慎重にルーファイしながら進む。傾斜のキツイところではアイゼンを装着。CLの的確な指示が飛ぶ。
夏道もまだ手入れはされておらず、時に藪漕ぎ状態。高度を下げるに従い、日差しと照り返しで熱さが増す。時折現れる湿原と、ほとりに咲く水芭蕉やワタスゲの群落に癒される。いくつかのピークを越えると、やっと北又の水場の分岐に着いた。
あるだけの水筒をもって5分ほど下る。あった! 水場だ。ごくごくと冷たい水を飲み、顔を洗って生き返る。分岐まで戻り、ずっしりと重たくなったザックを背負って、息を切らしながら最後の急登を登る。1時間ほどで犬ヶ岳山頂に着くと、少し下ったところに赤緑の栂海山荘が見えた。もう登らなくていい。間もなく無事、避難小屋に到着。そう言えば今日は誰とも会わなかった。避難小屋ではCL持参のウィスキーやワインをいただき、最後の夜を和やかに過ごした。(文責:3762)
写真をクリックするとスライドショーになります。
- いよいよ栂海新道に向けて出発。後ろは朝日小屋の別棟(従業員用)
- 朝一番、朝日岳に登り返す
- 黎明のなか朝日小屋を振り返る
- 朝日岳頂上直下。左は白馬岳。真ん中右奥は剱岳
- 朝日岳から吹上のコルに向かう。正面遠くに戸隠、高妻山が台形に
- 吹上のコル直前。朝の縦走路
- 吹上のコルから西の方向。富山湾を遠望
- 吹上のコルを経て、アヤメ平をめざす。桟道が出ている
- 栂海新道に入っても結構雪が出てくる
- このあたりところどころに湿原が…。満開の水芭蕉がいっぱい
- 栂海新道に入ってすでに5~6時間。朝日岳を振り返る。雄大で優美
- このあたりから所々険しい部分も出てきて、灼熱地獄の始まり
- 犬ヶ岳山頂から栂海山荘の赤とグリーンの小屋が見える
- みんな元気
- 栂海山荘手前に栂海新道を切り拓いた小野健さんの写真が…
5日目
今日は、いよいよ日本海に向けての最終日。昨夜の栂海山荘は、“さわがに山岳会”が管理している決して新しくはないが、とても清潔な避難小屋であった。
4時40分に、親不知海岸での日本海が一望できる展望風呂&おいしいビール!を目標に出発。 CLからのご指名で先頭を歩くことに。事前情報では、下り基調ではあるが菊石山、下駒ケ岳、白鳥山ほかいくつかのピークを踏み、急峻なアップダウンが続くとのこと。
出発後、いきなりの急峻な下り坂に驚く。その後、黄蓮山を過ぎると植生が変わり、ブナ林になり、幻想的な雰囲気に。また、今シーズンはまだ登山客が歩いていないため、登山道に夏草がぎっしり。踏み跡がなく、ルーファイをして歩く区間も…。
菊石山から下駒ケ岳までは、急登、木の根と岩場、鎖場を慎重に歩く。白鳥山からの展望は今まで歩いてきた栂海新道、北アルプスの山を一望することができた。その後、急峻な下り、一部残雪を歩きながら、シキワリの水場に到着。また、残雪でできた天然の冷蔵庫も。少し長めの休憩を取り、英気を養った。その後、歩を進め、10時50分に坂田峠に到着!
残り3時間で親不知ではあったが、タクシーで向かうことにした。もちろん親不知海岸での日本海が一望できる展望風呂を堪能!
北アルプスから栂海新道で日本海へ!残雪歩き、多くの雷鳥、高山植物、朝日小屋では今シーズン初めての登山客、栂海新道も今シーズンは誰も歩いていない登山道など、貴重な体験をさせていただいた。 CLからの“今シーズン誰も歩いていないルートなので何が起きるかわからない。万全の準備を!”の意味が理解できた、思い出の残る山行となった。(文責:3740)
【CL追記】
1.今回は残雪も多く、バリエーション的要素も詰まった山行となった。雪上歩行やルーファイは結構大変だったが、メンバーの意識が高く、チーム一丸となってこなすことができた。各人の経験値もぐっと広がったと思う。
2.百花繚乱の高山植物や、雪が残る北アルプス北部の雄大な景観は想定をはるかに超える素晴らしさで、強い印象に残る山行となった。
3.栂海新道(全長27km)は下りてみて、その長さを実感したが、一方でその開拓や日ごろのメンテの大変さに頭が下がる思いがした。また、ルート上部にいくつかある小湿原は珠玉のような存在だと感じた。
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- 栂海山荘を出発! きれいな避難小屋。管理している地元の”さわがに山岳会”に感謝!
- 高度が下がり、緑が濃くなってきた
- 出発直後はいきなりの勾配! 慎重に下りる
- 標高が下がるとブナ林が…
- 一部登山道に夏草が生い茂りルーファイ状態
- 白鳥山避難小屋に到着。1,200m台まで下りた
- シキワリの水場。897mだがまだ雪が残る。雪渓の下を流れる冷風で頭を冷やす
- 坂田峠、笑顔でゴール!
- 日本海、親不知海岸!
【この山行で出会った花たち】
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- サンカヨウ(山荷葉)
- キヌガサソウ(衣笠草)
- ハクサンイチゲ(白山一花)
- ウルップソウ(得撫草)
- タテヤマリンドウ(立山竜胆)
- イワウメ(岩梅)
- ワタスゲ(綿菅)
- ツクモグサ(九十九草)
- シラネアオイ(白根葵)
- ミツバオウレン(三葉黄蓮)
- ミヤマアズマギク(深山東菊)
- ミヤマシオガマ(深山塩釜)